Opus Aeternum

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アルバム解説

 今作の楽曲と、これまでの楽曲とで大きく異なる点を挙げるとすると、今作はへヴィなリフにこだわった点です。
 我々は所謂メロディック・パワー・メタルと呼ばれるジャンルを標榜しているのですが、どちらかと言うと、よりメロディに重きを置いた音楽性であったことから、少しへヴィさに欠けているなと常々感じていました。

 そこで今作では改めてヘヴィメタルバンドとしての自分たちの音楽性を見つめ直し、今までに無いヘヴィなリフを導入しようと決心しました。これまで培ってきたBaskerville流のメロディック・パワー・メタルというフォーマットの中において、どれだけそれを表現出来るか?というのが今回一番のチャレンジでした。とにかくカッコいいリフを沢山詰め込みました。

 また、楽曲面においても、ピアノのバラードや10分を超える大曲など、今までに無くバラエティに富んでいます。勿論、Basekervilleの基本である疾走メロパワ曲も満載。むしろ、今まであまり使うことの無かった、転調、変拍子、ペダルノートといった要素を取り入れることで、更なるパワーアップを遂げています。とにかく、聴いていて飽きない曲作りにこだわりました。是非、こうした点に注目して聴いて頂ければと思います!

 次に、アルバムのテーマについてです。

 Baskervilleの歌詞は全て私が担当しています。私は歴史の本を読むのが趣味なので、どうしてもそうしたテーマが多くなってしまうのですが、今作は曲ごとに独立したテーマを持っていた前作「The Sign of Six」と異なり、各曲に通底しているテーマがあります。それは錬金術です。

 錬金術と言っても世間一般のイメージにあるようなオカルト的な事にはあまり関心が無くて、数年前、西洋の経済史の本ばかり読んでいる内に、無限にお金を増やすことの出来る資本主義という仕組み、そして、それと表裏一体である科学技術の進歩の背景にある思想とは、実は錬金術と同じ思想なのではないかと思うようになったことが、こうしたテーマにしようとしたきっかけでした。

 アルバムのタイトル「Opus Aeternum(オプス アエテルヌム)」には、ラテン語で「永遠の作業」という意味があるようです。この「作業」 とは錬金術のことを意味していますが、錬金術とは金を生成するのみならず、「時間」をも含めた万物を創造することが出来る「賢者の石」を作り出すこと、 すなわち、この世界の理(ことわり)を解き明かし、 意のままにすることを目的としていました。

 「時間」の創造とは、すなわち、永遠の命を手中にすることに外なりません。永遠の命・・・まさに人類にとって究極のテーマですが、このアルバムでは、 このような神をも越えよという人間の思想、驕りを批判しようと思いました。人間は自らが存在する限り、 創造不可能な永遠を創造しようという作業を永遠に繰り返するので はないか?という皮肉をこのアルバムのタイトルに込めました。

 こうした思想は太古から現代に至るまで連綿と続いています。
 「信用」という実体の無い概念を担保にお金を又貸しすることで、価値の無限増殖を可能にした資本主義という思想は、産業革命以降の技術革新が物の大量生産を可能にしたことで、無の概念に実体という裏付けを与えられます。そして、ヨーロッパ中に溢れ帰り、行き場を探していたカネとモノは遂に海を越え、世界各地に押し寄せます。こうして帝国主義が始まりました。

   現代においても、資本主義を理論面で支える金融システムは異常とも言える程、複雑怪奇になり、未だに無謀とも言える増殖を続けようとしています。しかし、昨今の金融不安を鑑みるに世界の人々もいよいよそれが幻想でしかないことに気づき始めたのかもしれません。
 また遺伝子操作や人工知能等々、最先端として称揚される現代の科学技術も袋小路に来ているのか賛否が絶えません。これは「この世を人間の意のままにせん」という考え方への疑義が呈せられているのだと思います。そして、こうした考え方の源流を辿って行くと錬金術に突き当たります。錬金術とはいつの時代も人間が持っている驕慢さの一つの発露だと思うのです。

 資本主義も技術革新も人類に大いなる恩恵をもたらしてきたことは否定しませんが、現代においては、余りに行き過ぎており、暴走を始めているようにしか思えてなりません。そんな想いから、このアルバムのテーマを思い付きました。

 なお、アートワークの杖に蛇が絡まる意匠は「ケーリュケイオン」、または、「カドゥケウス」と呼ばれ、錬金術の根本思想であるヘルメス思想の象徴とされています。面白い事に商業の象徴でもあり、資本主義との共通点を見出すことが出来ます。こうしたことも、この意匠を選んだ理由です。

 楽曲の解説よりテーマの解説の方が倍以上になってしまいました・・・。こんなテーマですが、余り構えずに聴ける内容ですので、ご安心ください(笑)



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